軽蔑の報復

竹内結子が主演する映画『はやぶさHAYABUSA』は、探査機が自ら話し出すズッコケ演出が施されている、というデマが流行したらしい。


わたしは『はやぶさ』劇場上映期間は、あまりはやぶさ物の映画に関心がなく、上記の話を人から聞いたときも、へえそうなんだ、と思っただけだった。


いま現在の私は『はやぶさ』も『はやぶさ 遥かなる帰還』も『おかえり、はやぶさ』も鑑賞済みの状態である。


このデマのことをふり返って思うのは、『はやぶさ』では、オタッキーな大学院生・研究者のディティートークが、珍奇な、乗り越えられるべきものとして描かれていたことである。登場時は挙動不審な奇人だった水沢恵(竹内結子)は、物語がすすむにしたがって「ふつうの話し方」を具えた魅力的な学者に成長していく。事実とその伝え方の関わり、違い、というのは、明らかにこの映画のテーマのひとつである。


デマをふりまいた人々の心の奥底には、自分たちのありようが軽蔑(まさに軽くさげすまれたわけだ)されたことにたいする復讐心があったのではないだろうか、というのが、私の思いついたことである。