『ハラスメントは連鎖する』

きのうの日曜日は、安冨歩の文章を読みたくて、「一冊の本」を探して新宿の紀伊国屋高田馬場の芳林堂までさまよったが、どこも品切れだった。


「東大話法」の本もちょっと興味があったが、買うほどとは思わず。


区の図書館の本館まで足を伸ばしたがここにも「一冊の本」はないようで、しかたなく安冨歩の関わっている二冊の本を借り出した。『ハラスメントは連鎖する』と『「満州」の成立』である。


『ハラスメントは連鎖する』は、ちょっとした奇書で、人間が他人にたいしてする誤った行いを一括して「ハラスメント」と呼称し、そのメカニズムを考察した本である。わりに過激な精神分析畑の論者の主張を引くところから話をはじめて、それをノーバート・ウィナーサイバネティックスなどにつないでいく。


ハラスメントを行う人をハラッサー、ハラスメントを受けて被害をこうむる人をハラッシーと規定し、吸血鬼映画やゾンビ映画のように、ハラッシーもまたハラッサーに変貌しうるとしている。


この本の議論には、共感するところもあるけれど、反発を感じるところもかなりある。その世界把握の極端さは、江川達也の世界観を連想させるところがある。安冨は江川と年齢が近い。世代的な感性が共通しているのかもしれない。


伊藤計劃、ひいてはチョムスキーの、一見複雑ではあるにしろ結局は決定論的な世界観に、安冨が反発するのは、なんとなくわかるような気がしているのである。