19世紀の人間のほうが、いい音で複製音楽を聴いていた

 オルゴールのことである。自動ピアノというものもあった。

 直接楽器が音を出しているのだから、スピーカーコーンの質がどうしたとか、圧縮率がどうとか、そんなやっかいごとは存在しなかった。

 いまDVDで「追跡」という1950年代のハリウッド映画を見ていて、家族でオルゴールを聴くシーンが出てきて、はっとしたというわけである。そのオルゴールの音響は、もちろんヘッドホンを介して聴いているわけで、まったく20世紀的、いや、DVDを介しているのだから21世紀的倒錯、か。