「アダプテーション」再見

こちらは劇場で観たときは絶賛だったが、いま見直すと並みの作品という印象だった。才走った演出に幻惑されたのだろう。ビデオのジャケには、ジャンル特定不能ムービーと宣伝文句が銘打たれているが、なに、いたってまともな「書けなくなった作家もの」である。しかし、チャーリー・カウフマンの時代というものが確かにあった・・・。

現実とメディアの相互侵犯というのは、時代ごとに様相が変わっていくのである。私は見たことないが、「ビバリーヒルズ高校白書」のファンは、トニー・スコットの「ドミノ」を見るとギョッとするらしい。私は要件を満たしていないので、驚けないわけである。

ちょっと補足しておくと、「アダプテーション」公開当時、「マルコヴィッチの穴」はヒット作だったから、映画ファンにとっては「マル穴」は「現実」だったのである。「アダプテーション」は、そのことをくすぐったから「現実とメディアの相互侵犯」になったし、穏当なノンフィクションの原作(そういえば不安になってきたのだが、実在するんでしょ、この本・・・?)をああいうふうに改変することへの前振りの意味もあったのである。だから、当時であっても、映画に悪酔いしないまともな観客には、細かすぎる仕掛けだと思われただろう(http://us.imdb.com/title/tt0268126/business)。