絶え間なくつづく訂正

彼は一九三七年にハーバート(Herbert)家の一族であるローラ(Laura)と結婚してイギリス中部のグロースターシャーに家を買い、戦争中を除いてはそこで死ぬまで定住した。しかしその前に彼の改宗の問題がある。彼が一九三〇年にローマ公教会に改宗して以来、ことに日本では彼にカトリックであるということが付きまとっている。こういうことでも明治になって文学の観念までが外国のものとして日本に持ち込まれてからの日本の現代文学、あるいはまた、日本での文学というものの受け取り方にどれだけ多くのわれわれが実際には知らない、また時にはわれわれとこれというほどの縁がないものが解らないまま、縁がないままの作用を及ぼしているかということを思わないではいられなくて、文学がそうであるから当然それはわれわれの生活でも感じられる。(吉田健一「人と生涯」『20世紀英米文学案内23 イーヴリン・ウォー』13ページより)


こういうようなことが書いてあるんじゃないかなあ、と思い、中身を見ずに借り受けて、そして予想にたがわず、そういうことがちゃんと書いてあるという、この妙な充実感と勝利感のようなもの。

古俗から距離を置き、宗教からも身を引いて生きる私たちは、その代償として、つねに車間距離を確認しながら生きていかなければならない。気を緩めたら追突してしまう。