ブライアン・デ・パルマ『カジュアリティーズ』

デ・パルマ作品で一番素晴らしい。グッドガイがバッドガイに豹変する事情を、脚本・演出・演技どれも過不足なく有機的に絡み合って表現している。マイケル・J・フォックスが無能な兵隊というのがいいのだ。その無能な兵士がモラルの持ち主であるという一点を権利として、勲章を得てもいる勇者たちを裁く展開に、アメリカ人は身もだえしただろう。身もだえしろ、というのである。

しかしここでもまた救いとして、殺されたはずのベトナム娘が「復活」して(同じ役者がメイクしていて、言われなければ気付かないが)、神々しい合唱につつまれるのである。アメリカ社会にプロテストしたブライアン・デ・パルマも結局はアメリカ人であって、今度は日本人の私がたじろぐ番である。ここは公平に私にも、私よ、たじろげ、といっておこう。