ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙』

思わぬ援軍が現れた。認知科学者のダニエル・デネットが、本書の幻覚への過度の依存を批判する一方、文字の発達による右脳の想像力の減退、他者との差異を内面性に帰す思考、叙事詩による物語化、生存戦略としての欺き、そして若干の自然淘汰(とうた)、といった二分心崩壊の諸要因を、脳というハードではなく、意識というソフトの誕生仮説として評価できるとしたからである。http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20050725bk03.htm


またなんと余計なことを…。

西洋人のありがちなトンデモが、キリスト教は妄想でも(偶然にも)科学的根拠があったという類で、対して東洋人のよくやるトンデモが、民間療法は妄想でも(偶然にも)科学的根拠があったと頑張る類で、ジュリアン・ジェインズ(ついロデリック・ジェインズと言い間違えてしまう…)は前者の西洋人のよくやるトンデモパターンからは免れているようだ。

しかし古代の文学作品の特徴の変遷から仮定を引き出し、浩瀚な書物からの知見でそれを補強するなんて作業は危険すぎる。だいたい文学とは、「普遍をめざした特殊」なのであって、これを圧縮したら「普遍」になるのではなく「特殊」になるに決まっているのに。ジェインズには、文学や人間にたいする反省されない過度の理想化があったのではないか。

帯の推薦文をジョン・アップダイクが書いていて、有名作家だということくらい私でも知っていたので、ちょっと困ったが、アップダイクはそういう人だったのか…。