『狂気の愛』

『ポゼッション』の監督の作品。『ポゼッション』は、「いいから何にもいわずに黙って見ろ!」と勧めたくなる作品だが、これはいろいろ語りたくなってくる。

ごく簡単にいえば、ギャングの情婦にほれた若い男の映画なのだが、演出が普通でなくて、一回見ただけではよくわからない。

どのシーンも役者をハイテンション芝居させて、アップ主体で撮りまくるものだから、個々の役柄のニュアンスが吹き飛んでしまうのである。字幕を必死に目で追って、ストーリーをなんとか把握していくうちに、三角関係のむこうがわの悲惨な秘密が浮き上がってくるしかけである。あるいは大通俗な物語を、照れ隠ししながら語っているのかもしれない。80年代版『気狂いピエロ』を狙ったのかも。

銀行強盗とか、ギャングのキレ芝居とか、ちょっと『ダークナイト』を彷彿する。