『虚無への供物』

真犯人の動機がまったく納得できない。な〜にが虚無か。

物見高い大衆こそ悪しき犯人だって? ば〜か、読売新聞だって行って一千万部なんだ。日本の人口がどれだけあると思ってんだ。読んで見て話す人間なんて、昔も今もマイノリティなんだよ!



『黒鳥館戦後日記』を覗いてあれっと思ったのだが(九月十六日付「昨日の新聞は…」以降)、呉智英、この文章を批判した小論を書いてなかったっけ? デジャビュである。



『月蝕領崩壊』。『虚無への供物』と同じ物語を現実でもくりかえしていただけにしか思えないんだけどなあ。まあたしかにこういう私の感想は中井への同情がなさすぎるが、しかし、中井英夫は知情意のうちの意が決定的に欠落、あるいは、知と情が秀ですぎていたようにしか思えないのだ。単に、善意への供物、ナルシシズムへの供物、ではないか。あまつさえ、それを中井自身がむさぼっていた…。