世界を人質に取ることをやめていた晩年の藤子・F・不二雄

大長編ドラえもん vol.15 のび太の創世日記』を読んだ。藤子Fが手がけた最後の大長編ドラえもんである(1995年刊)。

【訂正】続刊がありました。

夏休みの自由研究のためにのび太とその仲間たちはもう一つの地球をつくり、そこの人類を観察する。もう一つの地球には地底世界が繁栄していて、地上世界と戦争寸前までいったが、ドラえもんがもうひとつの地球の中にさらにもう一つの地球を用意して、そこへ地底人を移住させる。…そういう話。

ちょっと読んでいてあっけにとられたのだが、藤子Fが、世界を人質にとるという80年代から最近にいたるまでの虚構作法の風潮(初期の大長編シリーズは、のび太たちが世界を救いまくっていた)に、当時倦んでいて、この作品はそういう風潮への批評であったとしたら、面白いと思うのである。

そこまで大きく育った社会は、もうぼくの手におえません。(189ページ)


ものすごく意味深。ほんとうに意味深。