『黒い雨』から

「もう池本屋も、広島や長崎が原爆されたことを忘れとる。みんなが忘れとる。あのときの焦熱地獄――あれを忘れて、何がこのごろ、あの原爆記念の大会じゃ。あのお祭騒ぎが、わしゃあ情けない」
「おい庄吉さん、滅多なことを口にすな。――おい、魚が来とる、浮子を引いとるじゃないか」
井伏鱒二『黒い雨』新潮文庫改版版30ページ)


『黒い雨』を読んでいない人に紹介するつもりで引用してみた。『黒い雨』にはこういうことも書いてあるのだ。