『氷点』

旭川市在住の医師である辻口啓造は、妻の夏枝が村井靖夫と密かに逢引中に、佐石土雄によって3歳の娘ルリ子を絞殺される不幸に遭う。結局のところ夏枝と村井の間に大したことはなかったのだが、これに勘付いた啓造は内に妬心を秘めることになる。

ルリ子の代わりに女の子が欲しいとねだる夏枝に対し、啓造はそれとは知らせずに佐石の娘とされる幼い陽子を引き取る。一つにはキリスト教の教え「汝の敵を愛せよ」を実践したいという気持ちもあったが、実の娘に手をかけて殺した男の娘とも知らずに育てさせ、頃合を見て真実を知らせて落胆する夏枝を見たいという、妻の背信行為に対する屈折した復讐心からの行動であった。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B7%E7%82%B9


すげえ話だなあ…。

しかし「大したことはなかったのだが」というのがちょっと可笑しい。

まあ現物を読めばいいことだが、佐石土雄はなぜ辻口ルリ子を殺したのか。暴行殺人なのか。ここの理由付けで、私の印象は変わるのだが…。

「ルリ子の代わりに女の子が欲しいとねだる夏枝に対し」というのも、今の感覚からするとなかなかにすさまじい。手塚治虫の『ブラックジャック』のエピソードに、子どもをなくした夫婦に大金をあたえる結末のものがあって、ブラックジャックが大金に添えた置手紙に「どうせまた子どもをつくるのでしょう」という文句が書かれてあったのも(もちろんブラックジャックは皮肉を言ったわけではない)、子ども時代の私をギョッとさせたものだが、まあ時代の違いである…。