夢の論理

私たちの感覚器官はニュートラルに外界を感知し、適宜それを情報処理するわけではないので、夢という局面で、その偏りがもろに出てくる。

つげの夢マンガが面白いのは、その偏りを表現するために、わざと絵を幼稚にしている点だ。「必殺するめ固め」など、特に最後のページは、すばらしい。いかにもかつての少年漫画風の刑事と警官が登場することで、さらに夢見る主体は「退行」し、同時に夢が終わってしまうわけだ。いかにも虚構な存在が、現実として機能してしまう不条理な夢の世界…。

最近の情報に裏打ちされたマンガがつまらないのは、要するに夢の論理が不足しているからなのだ。情報は、究極的には、世界のために、世界の治安に役立つためにあるのであって、個人の不安定な心には一片も資するところのないものなのだが…。幼稚さが心を賦活させる矛盾…。