『007/慰めの報酬』

なんか前作のほんとに直接の続編なのでびっくりした。前作のエンディングで狙撃した男をボンドが車のトランクに押し込んで、そこを襲われてやむなくはじまるカーチェイスから映画は幕を開けるのだ。

なんだか「組織に庇護されてるジェイソン・ボーン」の映画を見てるみたい。いまの時代に、組織への忠義という観念は、どこまで観客に受けるか、あるいは拒否されるか、というのを製作者が神経質に計測している感じがうかがえて、まあ要するに「現在の映画だなあ」と思った、ということ…。人事もクソもない下層で生活している身には、なんなんだよコイツら恵まれやがって、と思います。

脚本は、迷いに満ちているなあ…。リアルを追求する時代にあって、007特有の大時代な悪の組織とかは、描けないし、とはいえ、軍人がレイピストであるという描写が、悪者の描写じゃなくて病人の描写なんだよね、ちょっと見ててイヤだった。『告発のとき』で露骨な死体描写を連発したポール・ハギスは、真実暴露への欲求があるようだ。しかし、その欲求が007のフォーマットを破壊してしまう…。私は部外者だから別に構わないけど…。

マグノリア』を見た人が『M:I:3』で笑えたように、『ミュンヘン』を見た人は、今作で笑えます。

テンポがかなり速くてすこし驚いた。『ダークナイト』では、大型トラックの転倒を、せっかく実物を使ったのにあっさり編集していたのが意外だったけど、ハリウッドの感覚が変わりはじめているのを感じるよ…。