『インクレディブル・ハルク』

なるほどなあ…。

要するに主人公が悩まないのだ。そこがアン・リー版との違いなわけだ。どんなにヘコむ事態になっても、とにかく対応を考える、エドワード・ノートンがチャットで言ったように、ムーブしていくわけだ。

恋人の元に返ってきたノートンは、彼女に次の相手がいたために、当初はリブ・タイラーを避けるけど、速攻で元鞘の展開になるのが笑えた。しかも、心理学者の男は、ちゃんと理解して引き下がる(そのために心理学者なのだ)のがもっと笑えた。これ、いいね。

ウィリアム・ハートを断罪しないのも意図的だよね。「ほーら、やっぱ駄目だったじゃないか」みたいな俯瞰構図にして終わり。ハルクがとどめを刺さなかったティム・ロスがその後どうなったかすら教えない脚本は、よくできてるなあ、と思うのだ。

エドワード・ノートンは、十年前には『ファイトクラブ』や『アメリカン・ヒストリーX』で、散々悩んでいた。いまさら悩むなんてやってられるかよ、という気分があるんだろうな。『アイアンマン』といい、マーベル・シリーズは、中年になったかつての青年たちが悩むのをやめる(要するに開き直る)というコンセプトなのかな…。