帚木

雨夜の品定めのシーンで頭中将がかたる女が印象に残る。かいがいしいふるまいにあぐらをかいた中将が顔を見せぬ間におちぶれて行方不明になってしまった孤独な女。

家が荒れる、庭が手入れをうけずに草木が生い茂ることが零落の象徴として描かれて、同様のことが「桐壺」の桐壺更衣の実家の描写にも用いられる。

現代では、そんなの、ホームセンターで鎌でも買ってきて自分で始末すればいいのだが、当時は、女の仕事ではなかった、というか、下々の女のする作業だった。ある程度の地位にあれば、人をつかって手入れしなければならなかったのだ。それができなければ庭をもつ資格がなかった。このことひとつとっても、平安時代なんてろくでもない時代だったと私は思う。