『ゴールデンアイ』

まさかゴールデンガンとゴールデンつながりというわけではないだろうが、『黄金銃を持つ男』の設定がアレンジされて流用されている。低空で侵入した孤島の地下に秘密基地があるのや、ボンドとくらべて「血統」が劣るライバルがボンドに挑む設定などがそう。ゴールデンアイの起動ユニットは、まんま「ソレックス・アジテイター」なのである。

黄金銃を持つ男』と違うのは、人を殺すことの逡巡を元006であるアレックが口にするあたりで、そういうことをスカラマンガは言わなかった。やはり冷戦が終結して時代は変わったのであった。

ゼニア・オナトップをうまくストーリーに絡ませきれずに退場させたのはもったいなかったが、ボンドのシリーズではこれが限界か。ジュディ・デンチがMを演じるのもこの作品からだし、男尊女卑をどうやって訂正していくかの逡巡が、あるいはブロスナンシリーズの主題であったのかもしれない(男尊女卑の解消はダニエル・クレイグのシリーズで達成される)。セックスというのは、結局は個人間の闘争なのだということを、この作品は一瞬だけ観客に吐露したのである。