『ダイヤモンドは永遠に』

二人組の殺し屋の造型や、『ラブドワン』を真似たとおぼしき葬儀産業ギャグなどの設定が、なんだか奇妙に病的である。健全で明朗な1960年代は終わりを告げ、複雑怪奇な1970年代がはじまった…。この作品の一年ちょっと前に『地獄に堕ちた勇者ども』、つぎの年に『フレンジー』が公開されていることを思うと、なにやら時代の流れが感じられるようだ。

好みで言えば、私はガイ・ハミルトンの演出がいちばんいい。まさに病的で怪奇なところにぐっとくる。CIA/ボンドがティファニーにダイヤモンドを引き渡すサーカス付きカジノのシーンは見事だと思った。私は先に見た、本作の後に作られる『黄金銃を持つ男』のキックボクシング会場のシーンを彷彿とした。

Mの部屋のシーンがなかったり、マネーペニーとの掛け合いが屋外で行われたり、定型外しがちょっと楽しい。