『サンダーボール作戦』

のちに『ネバーセイ・ネバーアゲイン』としてリメイクされている。

ドミノとラルゴ(DVD字幕ではラーゴ)の関係が面白い。『ネバーセイ…』のラルゴは、ドミノを愛人にしようとして叶わないというのが話の要素の一つなのだが、『サンダーボール』では、はじめからドミノはラルゴの愛人で、ドミノの兄を殺害したことをラルゴはおくびにも出さないし(あたりまえだが)、ドミノも、自分と関係ないところで兄は立派にやっているのだと思っている。なぜラルゴがドミノを囲ったのか、わかるようでわからないのだ。

『サンダーボール』に残存していたフレミングのご都合主義が、『ネバーセイ…』において払拭された、ということかもしれない。また、金が原理のスペクターは、国家にたいする忠誠心が原理のボンドと、『サンダーボール』においては健康に対立していたのだが、アメリカ資本でつくられた『ネバーセイ…』になると、この対立は怪しくなってくる。女刺客であるフィオナ(『サンダーボール』)とファティマ(『ネバーセイ…』)、それぞれを振るボンドの言動に、やはり時代の流れが反映している。

裏切られたことを知った『サンダーボール』のラルゴは、ドミノを平然と拷問しようとして、割って入った科学者に「これはプライベートな問題だ」と言い放つ。『ネバーセイ…』のラルゴには、そんな分別はないし(タンゴの曲をわざわざラジカセで聞かせる、あの無意味なあてつけはなんだろう!)、拷問なんて思いもしない、せいぜいキスを無理強いして、アラブ人に売り飛ばすのが関の山だった。