『ロボット・モンスター』
宇宙人が地球を征服して、生き残りの人間に降伏を勧告する。おとなしく出てくれば、安楽死を与えよう。逆らえば、虐殺してやるぞ。こういう発想が、日本人には興味深い。あるいは、戦国時代の日本人なら、素直にうけとったかもしれない。西洋人が魚の活造りにすら不快感をあらわにすることなどもあわせて思い出す。
そういえば安楽死というのも西洋語の直訳くさい言葉だ(ユーサネイジャの語源のギリシャ語は肯定的でもあるような「良い死」なのだが、英語の表現では「寛容な殺し」になってしまう。やはりキリスト教的には抵抗のある物事なのだろう)。自殺のことなのに。フロイトは安楽死を選んだが、かれはキリスト教徒ではなかった。
宇宙人の造型が奇想天外なもので、ヘルメットをかぶったゴリラなのだけれど、これ、全編が少年の夢という枠組みになっているから、かえって奇妙ではないともいえる。科学プラス野獣、という、(少年の)これ以上ない安直な発想を具現化したわけだ。夢落ちではあるけれども、冒頭に主人公の少年が出会ったよそのおじさんが、シーンが変わったら少年の父になっていることからもわかるように、はじめから種を割っているのである。日本版の解説者がはやしたてるほどおかしな映画ではない。たんなる低予算映画である。
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