『ヴァイブレータ』
主人公は、観察してしまう人物なのである。他人をただただ観察するし、「内なる声」にも、なすすべなく引きずられる。主人公は、自分で自分の殻を壊す作業が必要だった。そして、それはひとりでする作業ではない。だれかがその壊れるさまを見届けなくてはならなくて、そして、その人物があらわれたわけだ。
男と出会って、吐かなくなった。というのは第一段階で、男と出会ったから、盛大に吐くことができた。実は、こっちが眼目だったのである。精液のように白い吐瀉物をぶちまけて、洗礼のように浴槽に沈むことで癒される。なんだかキリスト教的な展開。しかし、それもウソだから。人生には、なにがホントのこととして、あるんだろう?
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