『スター・トレック』

あまりに気になる映画なので再見した。
 主人公が崖から落ちそうになるシーンを繰り返しすぎる。クリフハンガーというテクニックを馬鹿正直に連発しているわけだ。カークの母がどうなったのかの説明がない(死んだのだろうけれど)。ビンテージカーの持ち主は、継父なのかどうかはっきりしない(幌を吹き飛ばすのはわかりやすい象徴だ。あと、崖からおとした車が底に激突するシーンを描かないのは、反抗はしたいけど結果をひきうけたくない心理のあらわれか)。反復が多すぎて広がりに欠ける脚本を、テンポよく演出することで気にならないようにしている。
 面白いのが我ながら不思議なのだ。見ていて、もどかしさの底にひそむ熱意を感じる。なにかを告白しようとして、思いとどまっている感じを、作品が発散していて、それが私の気をひくのだ。
 父という存在をあつかうことを巧妙に避けている。だから色恋の描写がうつろなのだ。ひっかけた女といいことをしようとして、ふと我に返る。すかさず、前に声をかけた女が現れる。こういうシーンは、ちょっと珍しいのではないか。
 そのウフーラをバーでナンパするシーンも異様である。あの、ずっと映りこむエイリアンは何なのだろう。
 まだまだ気になるところは尽きない。J.J.エイブラムスは語るべき作家なのかもしれない。