『天皇論』
- 作者: 小林よしのり
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/06/04
- メディア: 単行本
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国民主権というのは考え方から間違っていて、明治憲法は天皇主権ではなかったのだという主張は、前者は認められないけれども、後者は実は納得してしまった。
要するに、私は、なになにだから天皇はすごいとか、偉いとか、日本の本質であるといった著者の主張はしりぞけるけれども、実質的に国民の多くが現時点でも天皇のファンであることは事実だろうし、明治憲法下の日本はファシズムではなかったろうし(近いところまではいったかもしれないが)、明治天皇、大正天皇、終戦までの昭和天皇は暴君とか独裁者とかいうのとは違ったろうし、といったことは認めざるを得ない。
建国記念の日などというと、実在の人が合議しあって日本国の建国を決めたみたいだから、「神話の日」などとした方がいいように思うし、いっそのこと紀元節に戻してもいいし、神話を認めないのなら祝日であることもやめてしまえばいいのだ。
春分の日や秋分の日が、春季、秋季皇霊祭の言い換えだったことはうかつなことに知らなかった。これも、呼称を戻すか、祝日であることをやめるか選択すべきだろう。「「昼と夜の長さが同じ日」などと説明されたって、何で祝ってるのかわけがわからない」という小林の主張は正当だ。
幕末期に徳川家へのうっぷんがたまっていって、大政奉還がおこって、諸候は皇室をヨーロッパの王室のようによそおったということなのだろうな。当為をヨーロッパのように擬制して、富国強兵の実情を目指したのだ、と。それを後世の人がいろいろ誤解して怒っている、と。
天皇が古代から綿々として日本の精神の源だったのだという考えは認められないけれども(多くは大日本帝國期の緊張を合理化するためのフィクションだろう)、そう信じる人は否定しないという、そういう結論を得た。信仰の自由なのだし。