『小指の思い出』
むかし野次馬根性を出して『Right Eye』を読んだことがあるが上演を見るのははじめてだ(24年前…)。なんだかよくわからないがたしかにすごい。役者のからだのうごきが半端ではない。こまかいくすぐりがだんだんつながっていくところも面白い。
映画と違うのは、時間のながれが基本的に均質なのだということか。音楽や照明を工夫してスローモーションを演出しているところもあったけれど、幕を下ろさず暗転で区切りを入れていくので、事件や性格や状況を抽出したというよりは思弁の視覚化という趣が強い。だから立て板に水の要領でせりふをまくしたてるわけだ。映画との最大の違いは、本当らしさをはじめから顧慮せずに済んでいるところだろう。これはうらやましい。人間が出てくるという意味では、はじめっから本物だ。映画は断片の集積なので、気を抜くと「人間にみえる」ところにすら及ばなかったりする。
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