戦後文化「無料」の衝撃

テレビが登場しラジオが小型・廉価化をはじめた戦後は、無料の文化が一般化をはじめたプロセスに突入した時代だった。NHK一局しかない時代は放送も有料だったのである。おおくの人間(つまり「一般」人)は、無料の文化とそれまでにエスタブリッシュしていた文化を比較するようになった。

私も戦前の人間が見ていた無声映画はモヤッとした画面なのだろうとテレビから得た知識で勝手に思っていたが、この偏見はフィルムセンターへ通って自ら訂正した。鮮明に撮影したものを映写すれば鮮明に映るのだ。あたりまえの道理を戦後の人間は「無料」という歪んだフィルターにかけて自ら見えなくしてしまった。