NHKスペシャル『無縁社会』

あのNHKだからどこを「作っている」か分かったもんじゃない、とおもいつつも、最後まで見入ってしまった。風呂が沸くのを待ちながら、ワインをちびちびやりつつ見ていたが(実はこれ、危険なことなのである)、アルコールのせいかところどころ不覚にも泣いた。

脳化社会が完成期を迎えた様相があざやかに示されていた。古谷実のマンガとこの番組の違いは、まさに肉体の若さの有無でしかない。古谷のマンガの登場人物は、わりとあっさりとセックスをするが、しかし現実にはセックスをしない人は、傍からみて感心してしまうくらいに慎ましい。現実とはそういうものらしい。

地縁というのは要するに近隣の人々の身体的特徴を知っているということである。考え方の癖や声色ですら身体的特徴である。考えかたの癖とは、脳の働きの個人差のことなのだから。互いにそれをチェックしつつ生活することを近代人は拒んだ。そのつけがこのようにしてたまってきたということなのである。