『サボタージュ』

これは面白い。見過ごされても仕方ない、というよりも、見過ごされてよかったねと観客が思える「殺人」をヒッチコックは描いて、観客に提出している。殺人を犯す女に情が移っている刑事の男は、死体をちらりとしかみていない。その後死体は爆発にまきこまれて消失(焼失)する。話の筋から逆算すれば、女の弟である少年は「死ぬしかなかった」。クリストファー・ノーランの大先輩にあたる英国の映画監督の30代の傑作。当時の観客の非難も当然と思えるほどに、これは禍々しい!