『バンテージ・ポイント』

みそびれていたタイトルをやっとみたのだが、う〜ん。


まさしく、ジジェクのいう享楽の対象のような映画だなあと思った。リベラルっぽいリポーターが爆発でふっとばされて、そのまま死んだっぽいのやら、これもリベラリスト風の大統領が自分からテロリストにたち向かうのやら、フォレスト・ウィテカーふんする旅行者が家族回帰するのやら、物語がいちいち保守的なんである。テロリストたちの思想もなんだかおもわせぶりに伏せられていて、アルカイダのようではないのは彼らの人種構成からもほのめかされている。類型としてのテロリストとしてはずいぶん茫漠としているのだ。これ、なんだろうね。


救急車が横転するのをみて、ふと『マグノリア』を思い出したのだが(多視点というのも共通しているが)、『バンテージ・ポイント』の横転シーンにおける急激なカメラ移動(CGによるバーチャルな「移動」)は、ようするに神の視点というわけだ。「バンテージ・ポイント」。しかし、それは本当なのか。


ドラマがない、というかそもそも葛藤を描こうという意思が希薄で、ようするに割り切りが良すぎるのだ。


マット・デイモン君には負けんとばかりにヨーロッパの街をルノーかなんかで爆走するデニス・クエイドはなかなかかっこいい。