『結婚失格』

つい買ってしまった。

夫もへんな人だが、妻は妻でおかしな人物だと思う。解説は、そこを論旨に沿わせようとして無視しているから、妙なことになってしまったのだろう。元妻は遍在する神だとか、『エディプスの恋人』ですか?

しかしそもそも、なんで成長しなければいけないのかわからんね。社会を健全かつ活動的に保つため? じゃあ「理不尽」じゃないじゃん。理由がある。

失恋をひきずることも文化なのだなあと思うのだ。終わった恋をぐちぐちと蒸し返すのと、UFO話と、どう違うんだと、かつてUFOフォークロアにずっぱまりで、UFOこそが現実だった元少年としては、思うのである。現存しない対象について語ることは、これすなわち文化である。

小谷野さんのいう「2から5までが抜けている」というのは、私の語彙でいえば「エロスが香らない」という、あれだ。別に言わなくてもいいけど、というより、言いやすくするためにフィクションという制度があるのに、著者はそれを駆使することをためらっている。あははは、嘘をつきたくないっていうんでしょう。しかし、あなたの存在自体が、他人にとっては嘘に等しいのですよ。それを知ることが、ものを書くことの秘訣なのではないですか。これを知ったからって、なんら成長とはかかわらないのだけれど。
結婚失格 (講談社文庫)