『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』

自殺肯定映画というのは、基本的には嫌いなのだが、この作品はよくできていて納得できる。モードが収容所にいたらしいことの描写があっさりしすぎていて(ハロルドは気づいたのかな?)、もうちょっとくどくてもよかった。

ハロルドはモードが世間に反抗しているのだと勘違いする。モードもハロルドの思い込みに調子をあわせて「そうよ、反抗よ」なんて笑ったりする。モードはただ楽しく生きようと一生懸命になっていただけだ。1970年頃に80歳ならば、二十代の半ばで第一次大戦が勃発し、第二次大戦の終結のときは五十代のときだ。暗然とする。

プールのシーンでふと思った。あ、これ『卒業』のフォロワーなんだ、と。『卒業』では、セックスまでは疑わなかったけれども、この作品ではもう、徹底的にセックスを疑いまくっている。だから、大量消費時代の小ハムレットは老婆を相手に童貞を喪失するのだ。