『『別れる理由』が気になって』

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この人が感心している「江藤淳にはフォニーであることのリアリティの自覚が足りない」というのは、坪内祐三のいつもの舌足らずで、「フォニーなものいいをする人の事情にたいする関心が薄い」とでも表現するべきものであって、しかし、江藤淳は文章で批判対象に噛み付く、つまり、キレないと仕事をした気になれない書き手だったし、それをするためには「フォニーであることのリアリティの自覚」などは余計どころか批評活動の足を引っ張るものだったのである。それが分からないほどの読み手でもない坪内は、ここで、江藤淳を「理解していないふり」をしているのだ。

小島信夫は不倫でないとセックスをした気になれない性格のもちぬしだったらしく、相手は子持ちだったらなおよかったらしい。鼎談の場でそのことを聞かされた大江健三郎は気色ばんで(ちなみにいまの私とほぼ同年齢)、「これは極悪人ということだ」とか「それは相当なことですよ」などと口走るのが面白い。まあ妻子持ちの男とばかり付き合う女もよくいるらしいし、特記するほどのこととも思えない。しかし、たまたまものものしい装丁の写真集の被写体になったことのある坪内祐三は、なにかを感じてこのことを読者に伝えたのだ。

「別れる理由」が気になって

「別れる理由」が気になって