歌うクジラたち

『歌うクジラ』というロバート・シーゲルの自然小説があるらしく、村上龍の新作は題名をそこから拝借したらしい。しかしシーゲル著『歌うクジラ』は原題を「ホエールソング」といい、『クジラの歌』という訳題で出版されたこともある。『歌うクジラ』と改題されて出た頃には、村上は『歌うクジラ』の連載をはじめていたっけ、とぼんやり思う。

『月に歌うクジラ』という題名の本もあって、これはシーゲル著『クジラの歌』出版直前に出て、文庫改題版『歌うクジラ』の出るやはり前に文庫になっている。ダイアン・アッカーマン著葉月陽子訳。シーゲルの原著は1980年代、アッカーマン原著は1990年代に出版された模様。

クジラの歌といえば、1990年代だったか、クジラの音声を使って坂本龍一が音楽をつくる様子をおさめたテレビ番組を見た記憶がある。そのころの私はビートルズのCDをまったく聴いたことがなく、アップルレコードからジョン・タヴナーの音楽が出ていたことなども当然知っているわけがないのであった。神秘的巨大哺乳類として鯨や象は昔から人類の関心の的であったろうし、そうそう映画の『イルカの日』が1970年代のものだったなあ。鯨の声などとても歌には聴こえねえぜって、凡庸な東洋人の私は坂本の番組に白けていたことであった…。