死刑宣告としてのカメラワーク

日テレ系の放送局だったか、柳田記者という方がいて、私も柳田だからちょっと親しみがわくのだが、彼が岩手の石巻港津波映像を撮ったらしい。

のちに繰り返して放送される際には、細かくトリムされたようだが、迫り来る津波を背景に自動車に慌てて乗り込む人の映像をカメラは収めていた。

自動車からズームバックすることで、自動車は津波に襲われて混乱する石巻港の景色の一部になって、いいかえれば「消失」する。ズームアウトするのである。

「死刑宣告としてのカメラワーク」などと書くと柳田記者を非難しているようだが、もちろんそういう意図はない。ただ、そういう風な事態を実現してしまってもいるよな、と思うのである。死体を映すこともある種の死刑宣告であるし、映さないことも別種の死刑宣告である。