虚構の世界における純粋殺人

私などはやはり落語の「死に神」がまっさきに思い浮かぶ。あれは命を蝋燭の炎として描くことで、そのはかなさを表現しているわけだ。本当に命がはかないものかどうかはよくわからないのだが。私は生物に興味があっても生命には関心がないというのは、前にも言ったか。


殺人への嗜好を「素質」として具えたキャラクターは、虚構の世界では人気者だ。ジェイソンだのマイケル(『ハロウィン』)だのの類である。荒木飛呂彦が創造した吉良吉影なども私には印象深い。これは現実の人間が、「殺人の素質」を持つことが困難であることの傍証ではなかろうか。