信号と旋律

小谷野さんの挙げる『署長マクミラン』が、『男と女』や『イパネマの娘』のバリエーションに聴こえてしまう…。



偏見かもしれないが、日本人のつくるメロディは、あまり信号っぽくならないのである。現代音楽の作曲家はそうではないのかもしれないが、ポップス系の日本人アーチストは、だいたい「歌い上げて」しまう。「日本のジャズ」とか、「日本のボサノバ」というと、聴く前から「だいたいあんな感じ」と予想されてしまう、あの感じ。


私はショスタコービチの第九がけっこう好きなのだが、第一楽章で金管楽器が変ホ調で、「ドソー」「ドソー」と曲の流れにアクセントを入れる(?)のが可笑しくていいのである。だんだん頻繁に登場してくるのも楽しい。



信号すれすれのメロディといえば私が思いつくのは、アイブズの「答えのない質問」のトランペットである。ポップスにくらべるとちょっとシリアスに聴こえてしまうが、欧米の作曲家はこういう「遊び」は慣れたものだろうと思う。