既視感について
なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか 記憶と時間の心理学
- 作者: ダウエ・ドラーイスマ,鈴木晶
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/03/26
- メディア: 単行本
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もともと小谷野さんの議論で、あれあれと思うことがあって、私は、小谷野さんが歴史を、まるで現に実在しているもののように語るのに、違和感を感じるのだ。
小谷野さんの持ちネタであるところの、「便宜的な時代区分は便宜であって実在しない」説というのも、これだけ聞くとしごくごもっともな話に聞こえるのだが、どうも詳しく話を聞いていくと、なんだかあやしいのだ。歴史、つまり事件は、実在ではなく生起して消滅する事象にすぎないと私などは思うのだが、小谷野さんにとっては、そうではなくて、過去に存在して今は消滅した、なんというか、風化した石像のようなものに感じられているらしいのだ。私は時代区分はおろか、歴史そのものだって実在はしないと思っているのである。記憶もまた、実在しない。
過去になにかがあって、証言だけが「現在に残っている」。歴史なんて、それだけのことでしかないのにね、と私なんかは思うのだ。だから証言の効力を競って、アカデミズムのなかで侃々諤々とやりあっている。そう、やりあって「いる」わけだ。現在形。常に、現在形なのだ。