中村珍『羣青』

 『桐島、部活やめるってよ』をレビューしていたあるブログの管理人の人が、この漫画のレビューもしていて、表紙の絵の力強さにひかれて買ってきたのだが…、


 これは参った、という感じの、素晴らしい作品である。最近ぜんぜん小説と漫画をフォローしていなかったことを、反省する気分になってきた。


 愛を突き詰めると「私はなぜ私なの」という答えのない疑問にぶつかる。愛というテーマにおいて言及されがちな「あなたはなぜあなたなの」というのは、この問題の系であって、恋する者は、すみやかに「あなた」から「私」へと、思考の対象を移行しなければいけないのである。この作者は、その移行を上巻の前半で難なく完了していて、その手捌きの見事さに読者の私は唖然とした次第である。