マンガを絵で読む

手塚治虫ができたばかりの週刊少年漫画誌に連載した(1959年ごろ)、『スリル博士』や『0マン』を読んでいるのだが、描線のやわらかさがいい。

『マンガの昭和史』の掲載誌写真(83ページ)と比べると、今読んでいる講談社全集版の『スリル博士』が描き直されたものであることがわかるが…。

どろろ』あたりから『きりひと賛歌』あたりでいったん頂点をきわめる手塚のリアル志向のほうは、学生の頃食傷するほど読んだので、『スリル博士』や『0マン』の絵柄、ページ全体の雰囲気が私にはかえって新鮮に感じるのだ。

若い頃の手塚の、マルチアングルとさえ形容したいほどの構図の自由さというのは、その後のマンガの歴史で捨てられていった方向性なのだと痛感した。ちょっと目新しい構図を選ぶと、すぐ「実相寺演出だ!」などと通ぶったことを言う後続世代がはまっていった硬直性を思う…。