夢と情報

初期の手塚漫画は、夢というか、空想をそのまま描いたもので、そのタッチに慣れてしまいさえすれば、いまでも抜群に面白い。それこそ、演劇的に世界が自足している感じがあるのだ。

劇画以降の漫画の発展とは、要するに、情報がかつての夢、舞台、に侵入してくる過程である。そこにキャラクターがいるのであれば内面もあるはずであろう、という、余計な配慮が、漫画を産業にし、そして同時につまらなくしたのである。情報というのは、ほら、「余計な配慮」そのものではないか。

手塚は情報漫画を描けなかったろうが、情報に無知だったわけでもなく、自分の描く夢に情報を溶け込ませていたのである。

しかし情報漫画とか、なにが面白いのかねえ…。私は、自分が体験し得ないことについての情報は、猟奇的なものにしか興味がないので、とくにそう思うのだ。その情報が古くなったら、それっきりじゃんよ、と…。