私もまた悪人ではなかった

ただの凡人だったのである。凡人が悪ぶって、ああだこうだ言ったって仕方なかったのである。直近で竹熊氏のことを言っておいて、自分が悪人でないことを忘れていたのだ。

何もしてやれないのだ。自分が生きていることが何一つ役に立たなかったのだ。関係がないという言葉は、あとに残った人間のただひとつの慰めであり、同時に棘のようなものだ。

存在証明などというものは、戸籍くらいしかなくて、もちろん外人は読めないのだから、何の普遍性もない。いつのまにかここにいて、いくたりかの出会いに恵まれて、それに甘んじるしかない。あらゆる人が、いつのまにか消えてゆく。

何もしてあげられないことを認めたくないんだよ! わかるだろう…。もちろん、認めたくないことだけが、すべての人にとっての事実なのだ。これほど鮮やかで重みのある根拠というのはほかにない。