『民主主義とは何なのか』

民主主義とは何なのか (文春新書)

民主主義とは何なのか (文春新書)

第一章、第四章、結語を読んだ。

民主主義すなわち悪と著者は主張したいようだが、それは無理だろう。ロックが軽かったのは、ボッブズと独立に軽かったまでで、ロックはべつに意図して『リヴァイアサン』を裏切ったわけではない。ホッブズもべつにキリスト教に距離を置こうとしたのではなく、ローマ教会を批判しただけだ。チャップリンアメリカでヒトラーを批判しても怖くないのと同じように、清教徒革命中のイギリスでカトリックを批判してもそれはべつに崇高なことでも勇気ある決断でもなかった。

君主制だって名君もいれば暴君もいただろう。おおく意見を聞かなければ民主主義にならず、自己の意見が相対化されることを恐れる勢力が集団の独裁をめざすことがありうるというのは、たしかに民主主義の弱点だろう。

第二章、第三章のほうが面白い。

嫉妬して才能あるものをことごとくひきずりおろすアテナイの人々が面白い。君主制に親和的な人格は権威主義的で、民主制に親和的な人格は傲慢で嫉妬深いというだけの話なのかもしれない。

ブルボン朝の拡張主義や放漫財政に一言も触れないでフランス革命を語られても困る。