「泥棒と君主を一緒にするな!」

『民主主義とは何なのか』の「もう一つのインチキ――革命のプロパガンダとしての人権」(198ページ)が気になったので、ロックの『統治論』(中公の世界の名著だとこのタイトル)を借りてきたのだが、長谷川三千子がなにをもって「インチキ」と呼ぶのかわからない。

199ページの「これはもはや「人民」の内側における敵対行為の話ではない」から「これは確実に絶対君主における恣意的な圧政に対する人民の抵抗の話として理解されたに違いないのである」でおわる段落(「内側」は本文では傍点)は、まるごと、長谷川の信念をロックの論述がきずつけたことにたいする当惑の表現でしかないのではないか。

横滑りもなにも、ロックは専制君主も泥棒も同じものだとみなしたというだけの話ではないか。