『イングロリアス・バスターズ』

感情の相互交流があったわけではないショシャナとツォラーが、いろいろあって最後に2ショットになる。そうなるということは、そのシーンでは作者はツォラーに気持ちを込めている、つまりツォラーのショシャナにたいする片思いを描いている、…はずなのだが、そういう感じではない。その直前にツォラーがショシャナに挑むシーンなどまるで女性が監督したかのような演出で、ランダがハマーブルクを絞殺するシーンと同じく、タランティーノは男の不気味さを描くことに魅せられている。タランティーノ映画の女性不在記録はまたも更新された…。

 ある種のセンスに関して、童貞と名指すことが流行した。それにしても、童貞童貞って、みんな騒ぎすぎ。普通の童貞は、タランティーノみうらじゅんのようではないのに(まあ、子供をつくりたくないという本心を包隠す口実を、みんなが必死で探しまわっていて、これもその一環なのだということは、よく承知しておりますけどね)。