男の空疎と不安

男は性交の際にファンタジーに従って自我を興奮させ男性器を勃起させて射精を済ませる。その一連の流れは男本人にとっては、毎日自己が妄想から強迫されている観念をとりあえず実現したものに過ぎないから、たとえ射精を迎えて性器周辺が快感を感じたとしても、男は達成感の低い空疎な感情を味わうことしかできない。射精の後に女と戯れることで、男は女から、自分が抱いていたのとは違うファンタジーを教わって、好奇心を刺激され、心が活性化するわけだが、今度はその知識を射精までの行程に位置づけることが出来ないから、男は不安に駆られるというわけだ。

男が口論の相手に言返す時に「そんなの知ってる」という表現を選ぶのは、知らないことに対する不安があるからだ。だから、男にとって歴然と格下だと看做せるものには「知らないなあ」と言える訳だ。女が「そんなの知ってる」と言うのは、本当に過去にそれを体験したことがあるときだけだ。女の場合、興味を引かれてなおかつ今後体験したい対象に限って「何それ、知らない」と言う。体験したくもない対象には、「そんなの関係ない」と言うわけだ。