『ねじの回転』は心理学である

アマゾンの小谷野さんのコメントが気になっていて、あらためて古本屋で安く買ったのをパラパラ眺めてみたのだが(5年くらい前に読み通した記憶がある)、ようするにこれって心理学なのだ。当時の最先端の知見をフィクションに盛り込んでいる。

いまとなってはあたりまえの手法であるところのものが、いろいろ使われていて、たとえば家庭教師が遠くから塔を眺めていたら誰かがいてじっと見ていると見知らぬ侵入者であることに気づくシーンなど、幽霊を見るという心理状態についての詳細なレポートなのである(対象者以外にかんする感覚入力が減衰するとか)。いま読んでもゾクッとする。

だから、ただただ「ねじの回転」なのである。怪談話は怪談話さ、題名なんてないよ。いや、君の話はちょっとそこらにないからね、いいタイトルがあるよと「私」は言う。そのタイトルこそが…。

たとえば新潮文庫旧版の74ページには、幽霊を自分が見ることの意味を家庭教師が卒然として悟る様子が描かれているが、『レギオン』をみたばかりの私には、これはまさしく宗教的な覚醒のシーンなのだということが明瞭に理解できる。そういえば天使だって(『レギオン』)、精「霊」なんだものな。ある種の気分に浸された時に人は霊を見るのだ。