和田はつ子の小説

 よく調べてないのだが、角川ホラー文庫のほうで活躍してから、時代小説の方に進まれているのだろうか。先だって匿名子がくさした文言を小谷野さんが面白がって言及した作家の小説を、どれどれと買ってみたのである。とはいえ、百均コーナーで旧作の『マインド・コントロール 心理分析官加山知子の事件簿』(角川ホラー文庫)を選んだのだが。

 小説作法として「説明するな描写せよ」というのがあるらしいことをむかし筒井康隆のエッセイで読んだが、この作家は、地の文でも登場人物のセリフでも、ばんばん説明口調で話を進めていっていて、私はけっこうこういうのは好きな方である。主人公が同僚刑事たちに快楽殺人犯と強姦魔の違いについて講釈するのだが、そのセリフが笑ってしまう。「相手の首を絞めながらインサートすると、たまらない絶頂感があった、だからやらずにはいられなかったと告白したのは、戦後すぐの焦土に出現し、十人以上の若い女性を殺した強姦魔小平義雄だったと記憶しています(51ページ)」。「戦後すぐの焦土に出現し」というのが、いいではないか。

 まあ頑張って読了するほどの情熱もないのだが、鞄に入れて持ち歩くつもり。