小説

小説「失われた男を求めて」

昭和の終わりか平成の初めの頃、女は駅前の大型スーパーに単3電池を買いに向かっていた。女はこの東京郊外の新興住宅地に越してから運転免許を取得して軽自動車を日常の足にしていた。電池はビデオデッキのリモコンのためのもので、他のついでが何も思い浮か…

小説「失われた男を求めて」

昭和の終わりか平成の初めの頃、男は事務所のワンルームマンションで、灰皿の中身を三角コーナーにあけて、水を注いでいた。吸い殻の一本にまだパイプがささっていたのに気づいてこれを外した。透明なプラスチックでできていたパイプはヤニで黄褐色に濁りフ…