『多重人格そして性』

有料配信があったので意外にさくっと見れてしまった。アマゾンのマーケットプレイスでは6000円だなんて値がついていたが…。

『YOYOCHU』で使われていたのは、わりと最後の核心部分からのフッテージであったのだと知る。だから、この作品自体はそんなに怖いものではない。ビデオのなかでは、多重人格とされている女性が男優と心ゆくまでセックスを堪能する様子が、すこし退屈なくらい繰り返され、ところどころで女性が発作を起こす映像が挿入される。

マチュア精神分析家にあるまじき感想かもしれないが、この作品を見たからといって、とくに人間の心の不思議に思いを致すということにはならないのである。私は、生物のことを考えても、生命のことについてはあまり考えないのと同じように、人の話は聞くけれども、人の話の内容の実在性にはさして頓着しないのである。話をする肉体が私の目の前に存在し(映像だけれども)、話された内容に私が一定の理解を示す。それだけである。