2007-01-01から1年間の記事一覧

遠くの空に消えた

かなりよかった。 ちょっと摩訶不思議な「語られた80年代」における変てこだけど楽しい田園生活。少年少女たち、それぞれがかかえる欠損と、信じることの大切さ。奇跡を期待すること。

「ゾディアック」原作

映画とずいぶん印象が違う。 まず主人公の私生活描写がまるまるない。映画でギレンホール演じるグレイスミスのあれらのエピソードは、映画用に著者に取材したか、あるいはまったくのフィクションであるのか。 文庫のカバー折り返しに、ギレンホールとグレイ…

巨大な皮肉

チャップリンの「一人殺せば殺人者で、百万殺せば英雄だ」というのは、よく考えたら欺瞞であった。 シリアルキラーが百万人殺したところで、かれはやはり犯罪者なのだ。 「戦争英雄」は、国家の依頼によってそれを遂行したのだから、国家はそれに報いなけれ…

仕掛け

映画では作曲家なのだから、唖然とするほどの間違いではありません。 http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20070811 この場合は猫猫先生のほうが劣勢。rento氏はまさしく「映画では作曲家なのだから」というフレーズを猫猫先生の口から引き出すことを狙ってい…

ピーター・ボグダノヴィッチ「ハリウッド・インプレッション」(フィルムアート社)

彼は初期の映画オタクとして、ソダーバーグやタランティーノの先輩にあたる。この本では、斜陽を迎えた60年代ハリウッドや、ジェリー・ルイス(ブームマイクを異様に嫌った)やケイリー・グラントへのインタビュー、政治的でなく好奇心からのニクソンとの…

ジョン・フォード「真珠湾攻撃」

真珠湾攻撃の前後を、記録映像のモンタージュや特撮映像で描いている。当時の日本にここまで客観的かつフェアで、そしてなにより多弁な映画をつくる能力があるわけがなく、ひたすら感嘆の思いで見る。

消えた天使

「セブン」のふたりの刑事のうち、モーガン・フリーマンのほうがおかしくなってしまったら…、みたいな話。性犯罪者を監視する自治体職員が、仕事にのめり込んだ挙句、銃は携帯するわ、誘拐事件の捜査まではじめてしまうわ…。アメリカの性犯罪者監視行政は、…

未必の…

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070808-00000005-mai-soci <栃木・容疑者自殺>弁護士は自殺の意思把握 県警に伝えず 8月8日3時1分配信 毎日新聞 栃木県さくら市の保険金目的の殺人事件で、妻殺害容疑で再逮捕された自動車修理販売業、小林広容疑者(…

『殺人者はライフルを持っている!』

とても面白い。興奮した。映画が、知的な綾をそなえている。この作品の原題は「ターゲッツ」。劇中に即して訳すと「各種標的」というところだろうか。引退を決意する老俳優と、家族を手にかけたのち無差別殺人に走った狙撃犯との人生が交錯する顛末。現実を…

アレクサンダー・バークレー監督作「ゾディアック」

フィンチャー監督作より数年前に発表されたゾディアックもので、フィンチャーの映画に影響を与えている画面のルックがいくつかある。ダム湖の描写とか。バレーホ郡が田舎だったという感じは、こっちの作品のほうがよく出ている。バークレー監督版は、バレー…

カフカ

カフカのように孤独に (平凡社ライブラリー (265))作者: マルト・ロベール,東宏治出版社/メーカー: 平凡社発売日: 1998/10/01メディア: 新書この商品を含むブログ (5件) を見る20世紀にいたって、文学は父の書斎で読まれたり母の退屈しのぎとして親しまれ…

浦山桐郎「キューポラのある街」

むちゃくちゃおもろい。貧しさゆえに高校にいけない悲しみがネタのひとつでいまみると感慨深い。

小林正樹「上意討ち」

三船敏郎が愛という言葉を連発するのに心を打たれたのだ。

コスタ=ガブラス「背信の日々」

白人至上主義団体に潜入した女性FBI捜査官。しかし彼女は対象者を愛してしまう。黒人狩りのシーンがなかなか衝撃的である。グループの中でわりと弱腰な男が主人公の捜査官にもらす弱音がおもしろい。 そりゃあ殺しは怖い、おれだって引き金をひくときは目を…

ゆうべ、夜8時くらいに、四谷駅前で信号待ちをしていたら、脇に上智のサークルらしい集団がいて、たのしそうにはしゃいでいたのだが、その話題にちょっとおどろいた。ちゃんと見てないので不確かだが、そのサークルのなかに女性はひとりしかいなくて、あと…

どしゃぶりの雨

フロッグ星の霊長類にあたる生物ポール・トーマスは造化の神のはからいで、テレキネシスとクレアボヤンスの能力をもっていた。居ながらにして、欲しいものをまねきよせ、見たい景物をはるかに眺めることのできるポール・トーマスの能力は、彼の知的領域から…

『水没の前に』

三峡ダム建設にかんするドキュメンタリー。面白かった。なにしろ規模がでかいので、日本のダム建設でも村が消える哀歌はおなじみだが、こちらはなんと町が消える。町をこわす、とはこういうことなのか。爆薬でビルを崩落させ、水道管を寸断して密栓し、人力…

死者と生者の行違い

映画「叫」の話。幽霊がでる由来を主人公が発見してそれを処置する。やれやれ一件落着かと思いきや、幽霊は生者に祟ることをやめない。ここに幽霊という概念の面白さがある。映画はそれを理屈っぽく指摘したかのよう。考えてみたら、そうなのである。本質的…

アメリカの友人とカリオストロの城

「アメリカの友人」で道の脇のバンクをフォルクスワーゲンが上っていく描写を、「カリオストロの城」はパクったんじゃないかと思うんだが、ググってもなにも見当たんない…。

「誤解を恐れずに言えば」

ふと気付いたのだが、この言葉、「自分がその問題に関して誤解している可能性もあるが、自らの恥を恐れずに意見を言うとすれば」の意味で使っている人と、「理解力のない他人に誤解されて無用の印象をもたれることを恐れずに言うならば」の意味で使っている…

ランズマンの言い分

「シンドラーのリスト」を「ショア」の監督が批判している。600万人が殺された歴史的事件の末節に、数百人を助けたドイツ人の事例があったからといって、そんなケースをホロコースト本体と対置するような真似をするな、というわけ。これには一理あると感じざ…

傍流は主流より息が長いか?

そしてそのぶん、古さを感じた(筒井康隆の作品にはそのようなことはない。皮肉なことだが傍流のほうが息が長い)。http://d.hatena.ne.jp/rento/20060920 本当だろうか。去年の「日本沈没」対「以外全部」「パプリカ」「時かけ」の映画対決ではないが、小松…

戦後民主主義とは茶々のことである

座談会 昭和文学史 第四巻 三島の調べもののために図書館で読んだのだが、三島についてよりも、井上ひさしが時折入れるつまらない茶々のほうが気になってしまった。最初はむかついていたのだが、「戦後民主主義とは茶々をいれるということ」なのではないかと…

血を吸うカメラ

フランケンシュタインものの変種。この映画の主人公は「冷酷な殺人鬼」ではない。刑事の会話から判断すると、彼は三人しか殺していない(しか、というのもなんだが)。青年の主人公が、少年期からのやむにやまれぬオブセッションをとうとう開放してしまった…

視線のサディズム

「GANTZ」のレイプシーンや虐殺シーンを見ていて、おおやってるな、と思った。数年前の新宿大虐殺のシーンも、いつかはだれかがやるだろうと思っていたことを、こちらの想像以上にやってくれて快哉を叫んだものだ。サディズムの本質は嗜虐自体にあるの…

鳥かサイコか

「鳥」をはじめてちゃんと観た。面白かった。終わりかたが、暗転したまま「END」の文字を出さずに配給のロゴに移ってしまうのが、いい。なにしろ「サイコ」は、とうにオチが人口に膾炙したあとで、わたしが生まれたものだから、観てもなにも驚くことがな…

「大菩薩峠」

フィルムセンターで「大菩薩峠」を観た。日本映画全盛期('57製作)のプロダクション力に圧倒された。はりぼての樹の幹でさえ、ありえないほど太いのだ。巨大。ひたすら巨大。大菩薩峠 [DVD]出版社/メーカー: 東映ビデオ発売日: 2005/07/21メディア: DVD ク…

オーソン・ウェルズのシェイクスピア、マクベスとオセロ

シェイクスピアってほんとうに人間のことしか扱わないのだなあ、気候すら心理表現の道具になりさがってしまう…。まさにルネサンスの総決算。

マリー・アントワネット

この監督らしく、あいかわらずディティール重視、ドラマ軽視の作風なのでわかりづらいが、最後の対話(「並木を見てるの?」「…お別れを告げてるの」)にあきらかなように、要するに「旦那が理解力のないアホだったせいで、マリーも巻き添えを喰ってしまいま…

マンディンゴ

マンディンゴ【字幕版】 [VHS]出版社/メーカー: 東北新社発売日: 1999/06/25メディア: VHSこの商品を含むブログ (2件) を見る黒人奴隷の話。主人と奴隷のあいだに友情がめばえつつあったのだが、惨劇によって引き裂かれる…。これは素晴らしかった。若い主人…