2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

和田はつ子の小説

よく調べてないのだが、角川ホラー文庫のほうで活躍してから、時代小説の方に進まれているのだろうか。先だって匿名子がくさした文言を小谷野さんが面白がって言及した作家の小説を、どれどれと買ってみたのである。とはいえ、百均コーナーで旧作の『マイン…

生物と生命

鈴木貞美の著作歴を調べているときから、「大正生命主義」という語に異様さを感じて、何だこれは、などと思っていたのだが、『日文ナ』の、いよいよ当該項目にさしかかってきた。 少し前に、鈴木とまったく関係のない文脈で、私は「私は生物には関心があるが…

ふと思う

たとえば、松村雄策と小林信彦のビートルズ論争は、松村が終始慇懃に論を進めていれば、松村の圧勝であったのだが(追記。いまウィキペディアの「ビートルズ論争」を見返したら、それほどでもなかった)、松村には松村の盲点があって「作家たるもの」式の道…

名辞と実質

「大正生命主義」という名称に顕著だが、鈴木貞美はわりと用語法がざっくりとしていて、たとえば過去に存在した「大正生命」という保険会社のことを知ってか知らずか、こういう名付け方をするのである(鈴木の文献を参照していないので、このことはすでに鈴…

週末のアラート

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20110501 有職読みは辞書にない! と小谷野さんが警報を発したが、私の手元の集英社国語辞典には「有職」の項があって(あってあたりまえなのだが)、有識者の有識が有「職」に転化した歴史があるらしい。「専門家っぽい…

政府にたいするストックホルム症候群

整理していたVHSのなかから、森谷司郎版の『日本沈没』を発見して、このところ寝ぎわに眺めていたのである。 樋口真嗣によるリメイク版では、草彅剛演じる小野寺俊夫の自己犠牲によって日本沈没(の完了)を辛くもまぬかれるあたりが、話の山場である。 森谷…

純文学の季節(が、かつてあった……)

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20110427 小谷野さんがまだ純文学と大衆小説のことを繰り返しているが、その区別が明確にあったのは、大正から昭和末期のことと限定してしまったほうが良いのではないか。時期を決めずに日本には純文学と大衆小説の区別が…

とはいえ

すこし前の話になってしまうが、月刊の方の文芸春秋を立ち読みしていて、東日本大震災についての岸田秀のコメントを読むためだったのだが、唯幻論のおさらいが全体の半分近くを占めていて、岸田説に馴染んでいる自分としてはちょっと不思議というか異様な感…

だーたーたーたー、たーたーたー

こんなに小さい頃に赤ん坊が「会話」する風景は珍しいのではないか。「写像理論」を地でいっている感じがして興味深い。赤ん坊はたがいに相手の真似に、すこしずつアレンジを加えることで「優位」を競っているのである。

帰属意識の二重化は、近代的なプロセスだろうか

鈴木貞美は『日文ナ』で「ある国家や民族が、ある文化圏に属しているという意識は、人びとの帰属意識(アイデンティティ)を二重化する」(152ページ)と述べている。 トインビーやシュペングラーが文化相対主義的な文化圏の発想を考えたあたりの説明で、…

日本文学史が特殊なものとは思えないのだが……

『日文ナ』は、対小谷野論争の焦点の一つである、日本文学史の特殊性にさしかかった。第三章の途中あたり。 ただまあ、これも私は思うのだが、鈴木の論は、ひらがなとカタカナが漢字とあまりにも見た目が乖離していることに論者が幻惑されたにすぎないのでは…

「活字中毒」

そもそも活「字」の前には、活版印刷があって、筆で書いた文字を版に起こしていたわけだ。 活字中毒者は、活字の印刷しか読めない、つまり活版印刷された筆文字を読みこなすことが出来ない、明治以降の「情弱」世代のことを指した言葉なのかもしれない……。

なぜ宗教文書は大量に遺されるのか

それはひとえに、人の心に関わるものだから、ではないかと思うのだ。歴史にしろ地理にしろ、あるいは叙情詩にしろ叙景文にしろ、ものにするには種がいるが、宗教のテーマは、人の心そのものだから、種は他のジャンルにくらべて広大である。他ジャンルのもの…

『日本の文化ナショナリズム』

地元図書館の蔵書に鈴木貞美著がどれだけあるか検索していたら、この本があって、ちょっと呆然とした。もちろん小谷野さんに『日本文化論のインチキ』があるからである。しかし鈴木著は2005年12月刊だ。 のっけから「黒澤明監督作品をはじめとする日本…

阿久根市

なぜ阿久根市がここまで熱いのかがよくわからない。なにか産業があるのだろうか。

言文一致の顕教と密教

『日本の文化ナショナリズム』を読んでいる。言文一致のところが面白い。坪内逍遥は、じつは「ことばと文章は一致して、かつ、あらゆる文章が一様なものに統一されなければならない」と考えていたのではなかろうか。 すべての人が、見聞きしたこと、考えたこ…

鈴木対小谷野論争・余燼

これは典型的な詭弁ですね。逆ではなくて、ほとんど同じことですよ。「ゆとり教育のおかげで学力が低下した」と政治家が言い、ゆとり教育をやめて、それでも学力低下が止まらない時に、記者から「あなたはこう言ったではないか」と言われて「ゆとり教育をや…

見たくないものを見なくなったら

見たくないものを見なくなったら、見たくないものを見る余裕がその人物から失われたということなのだから、余裕のなくなった人物が余裕のなさからくるいらいらを他人にぶつけるようになるのは当然の話である。他人は「余裕」そのものなのだから。 しみじみと…

『戦火のナージャ』

『12人の怒れる男』が面白かったので観に行ったのだが、これもものすごい傑作だった。

ニキータ・ミハルコフ

情緒を刺激する音楽の使用、時間の交錯、暴力、と映画のおいしいところを、ミハルコフは平然とくりだしてくるのが面白い。『光と影のバラード』がユーチューブで全編アップされていたのをつい見入ったが、デビュー作の頃から上述の特徴は一貫しているのだっ…

男尊女卑の周辺

前に小此木啓吾の本をいくつか読んだときに、日本人としてはかなり過度に核家族であることへの理想を口にするのにひっかかったことがある。世代的なものなのだろうか(小此木は1930年生まれ)。筒井康隆(1934年生)はなにかのエッセイで、大家族へ…

『歓待』へお越しやす

東京国際映画祭の受賞作、深田晃司くんの『歓待』が、とうとう今日から公開だ。 なんだか懐かしいような下町の印刷工場(こうば、と読んでください)が21世紀にも息づいていて、現代風に異化されたホームドラマが演じられる。 ベタな映画なのかと思えばさ…

ジェームズ・キャメロン原爆映画

なんだかいつのまにか本当に撮ることになったらしい。とはいえ、早くても観れるのは4年か5年後。

劣勢に立つ「ちょうふく」

重複を「じゅうふく」と読む者が絶えない。わりと本を読んでいるらしい人間までこれをやるから困っちゃう。じゃあ貴重品も「きじゅうひん」と読めというのだ。 とはいえ、わたくしも私小説を「ししょうせつ」と読む者だから、まあ大きなことは言えないか。

字幕の中で「妹はいまサラ・コナーより強い」と英語で書いてあるのに、なにか共感のようなものを感じて紹介した次第。私も震災後の文章に「サラ・コナー」という語を用いているから。

日本語について

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20110420 鈴木貞美対小谷野敦の論争は、ざっと眺めたかぎりでは6対4で鈴木有利の印象。とはいえ、じっくり読み返したら違う印象をもつかもしれない。 そういえば鈴木氏は『身も心も』の原作者なのだった。映画版しか観…

『攻殻機動隊 3D』

普通のアクション刑事ドラマとして面白かった。傀儡回しって、要するに人形使いのことだし、このシリーズはえんえんとおなじダンジョンを回っているようなものか。手を替え品を替え……。 田中敦子や山寺宏一たちは、もう15年以上、2032年付近をぐるぐる…

『ウラニウム戦争』

「ウラン その発見と研究、そして利用の歴史」とでも題したいような本。キュリー夫人などの偉人伝的科学者群像と、20世紀前半の量子力学研究熱、原爆開発をめぐる自由圏と枢軸側の暗闘、戦後の核開発と原子力利用、と幅広い内容を扱っているので、とりあえ…

文の一部をググればタイトルはすぐにわかっちゃう

まあ小谷野さんはそれ込みでコピペしたんだろうけど。http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20110419 しかし「妙な位置にうたれた句読点」って、句点まで妙な位置にうたれちゃこまっちゃうな。と、これはまぜっかえしになっちゃうか。

掘るなの禁止

ツイッターは、各アカウントの過去ツイートまで遡って読む癖があったのだが、それはやめてそのときごとのタイムラインの先頭を一瞥するだけになっちゃった。 もともとそういうものなのかもしれないしね。